求められる多様性への対応

多様性への対応が求められる社会的背景

 

日本においても、ダイバーシティやユニバーサルデザインの重要性が指摘されるようになっている。その背景として、世界にも例を見ないほど急速に進む高齢化、障碍者雇用の更なる促進、女性の社会進出があげられる。

 

進む女性の社会進出で多様化する働き方とは

 

このような社会の変化に伴って、これまで健康な成人男性を中心に計画されてきた多くの施設は、より多様な人が利用するための施設として改善する必要に迫られている。

とくに労働人口の年齢構成が大きく変化することが予測されるため、多様性への対応は、職場の施設(ワークプレイス)を中心として、通勤に使用する交通機関、銀行などのサービス機関、飲食店や店舗など広範囲の施設にも影響を与えている。

 

 

 

ダイバーシティとインクルージョン

 

ダイバーシティとは、「多様性」であり、「幅広く性質の異なるものが存在すること」という意味である。年齢・性別・民族文化・人種・身体的特徴などの違いを意識しながら、それらをプラス方向に活かすことである。

また、この概念は異なる分野の専門家をクロスファンクショナルなチームとして構成し、多様な人材により創造的な成果を生み出す経営管理手法としても注目されている。

新たにインクルージョンという概念が注目されている。

インクルージョンは、「異なる社会文化、個人的特質などさまざまな要素から起きる暗黙的な排斥や区別を取り払い、誰もが対等な関係で関わり合い、社会や組織に参加する機会を提供することを目指すもの」ということである。

つまり「ダイバーシティ」は人々の差異や違いを意識した言葉であるのに対し、インクルージョンは人々が対応に関わり合いながら、組織に参加している状態を作ることに焦点を当てている。

また、ダイバーシティが多様な人が働くことのできる環境を整える考え方に近いのに対し、インクルージョンは一人ひとりが自分らしく組織に参加できる機会を創出し、貢献していると感じることができる日々のマネジメントや文化をつくろうとする発想にもとづいている。

 

 

 

バリアフリー

 

施設におけるバリアフリーとは、多様な人々が施設の環境が原因となって施設を適切に利用することができないことがないように、その原因となっている障害を取り除いて、環境を整備するということである。

言い換えると、ユーザーのニーズを満足しないデザインを補って、少しでも多くの人が利用できるようにすることである。

主に、車椅子利用者が使用できるトイレの設置、階段の手すりやエスカレーターの設置、エレベーターの設置といった対応が行われている。

バリアフリーの基本となっているのは、「ノーマライゼーション」で、北欧でいち早く提唱された思想である。ノーマライゼーションが実現された社会とは、高齢者や障害者、病気を持った人を社会の弱者であり、保護すべき人々として特別視して隔離するのではなく、自己決定権を持った生活者として尊厳をもって個性や能力を発揮できるよう、生活や学び働く場の環境を整えていくという社会である。

 

 

ユニバーサルデザイン

 

バリアフリーが、障害を持った人に対する障害を取り除くという考え方であるのに対して、障害者や高齢者のために特別にデザインするのではなく、すべての人に使いやすくデザインするという考え方が、ユニバーサルデザインである。

健常者はつねに正常であるかのように思われるが、骨折する、妊娠する、泥酔するなどにより、たちまち障害のある状態と同じになる。また、海外旅行で言葉が通じないことも同様である。したがって、ユニバーサルデザインの対象はすべての人が対象となる。

たとえば、シャンプーの容器に付けられた凹凸で、リンスの容器と区別する例がある。視力障害がある人たちのみならず、目をつぶった状態の人、日本語が分からない外国人など、多くの人が簡単に識別しやすいデザインである。

施設の例としては、L字型のドアレバーがあげられる。指先を使わなくても腕で開けられるので、手が不自由な人、握力が弱くなった高齢者、また両手に荷物を抱えた人をはじめ、誰にでも便利である。

ユニバーサルデザインは、機能性が良いだけでなく、見た目の美しさや親しみやすさがともなっていることが不可欠である。

ユニバーサルデザインの解釈は、百社百様と言われていますが、一般的によく引用されているのは、ユニバーサルデザインセンター長であったロナルド・メイスが提唱したユニバーサルデザインの7原則である。

 

ユニバーサルデザインの7原則

 

1.誰でも公平に使用できること

2.使ううえでの自由度が高いこと

3.簡単で直感的にわかる使用方法となっていること

4.必要な情報がすぐ理解できること

5.うっかりエラーや危険につながらないデザインであること

6.無理な姿勢や強い力なしで楽に使用できること

7.接近して使えるような寸法・空間となっていること